 |
ご自身の歯(天然歯)とインプラントの違いは?
歯と歯ぐき・骨のくっつき方
歯と骨の間には、歯根膜という組織があります。
歯根膜は、簡単に言えば歯に加わった衝撃を和らげる、
クッションのような役割を果たします。
骨の上にある歯ぐき(歯肉)と歯の間には、2種類の構造が存在します。
1.上皮性付着 : 歯ぐきが歯にへばりついた状態(吸盤でくっついたような状態)。
くっつきかたは弱く、容易に剥がれてしまいます。
2.結合組織性付着 : 歯と歯ぐきがコラーゲン等の線維により、がっちりくっついた
状態。簡単には破壊されません。
インプラントと歯ぐき・骨とのくっつき方
一方、インプラント(現在主流のタイプ)は骨と直接結合します。
また、歯ぐきとインプラントは、上皮がへばりついたようの状態(ゴムで締め付けた
状態に近い)で弱くくっついているだけです。
インプラントに『歯周病』のような病気は起こらないのですか?
歯周病は、歯を支える骨が、バイ菌の影響で吸収されて行く病気です。
それでは、インプラントにはその様な病気が起こることはないのでしょうか?
実はインプラントにも同様な病気が存在します。
その名も、『インプラント周囲炎』です。
言葉の通り、インプラントの周囲の歯ぐきや骨が炎症(バイ菌に対する体の防御反応)
を起こします。
残念ながら、このインプラント周囲炎に触れているホームページは非常に
少ないようです。
従って、『インプラントは必ず一生ものだ』と思われている方もおられるかも
しれませんが、それは誤解です。
長持ちさせるためには、ご自身の歯と同様、あるいはそれ以上に適切な
診断・維持管理が必要です。
|
 |
インプラント周囲炎と歯周病の違いは?
歯周病は、『歯ぐきの病気』です。
主に歯周ポケットと呼ばれる、歯の周りの隙間に存在する歯周病菌が、
有害な物質を出し、その影響で歯の周りの骨が吸収されて行きます。
この場合、歯周病菌は骨にまで大量に進入することはありません。
一方、インプラント周囲炎には、下記のような特徴があると言われています。
・ 歯周病菌と同じ細菌が、炎症の原因となっている。
・ 天然歯の歯周病に比べ、インプラント周囲炎は破壊が著しい。
・ インプラント周囲炎では、人工歯根部と支台部の接合部に強い炎症が起こる。
・ 場合によっては、歯周病菌が骨の中まで入り込む。
インプラントは、生体にとってあくまで異物です。
従って、健全な天然歯に勝るものではありません。
例えば、動物実験で歯とインプラントを同様な不潔な状態(歯垢のたまりやすい
食事を与え、歯磨きをしない状態)にしておくと、
インプラントの周囲は天然歯より明らかに炎症が強く起こります。
一方、歯周病が進行してしまった天然歯は、その形状の複雑さ故、
歯磨きなどによる細菌の除去が難しく、その進行を食い止めるのは困難です。
それに対し、インプラントは形状が単純(まん丸)なので、歯磨きなどによる
清掃が容易で、適切な管理さえすれば進行した歯周病の歯を無理に残すより、
長持ちする場合もあります。
|
 |
インプラント周囲炎と歯周病の関係は?
重度歯周病の患者様にインプラントを行った場合、
歯周病になっていない患者様に行ったときと比べ、明らかに失敗率が多くなる、
というデータがあります。
(ある報告によると、インプラント成功率は通常90数%台ですが、
歯周病の歯を 残したまま行われたインプラントの成功率は70数%台まで
下がるそうです。)
これは、天然歯の歯周ポケット内細菌が、インプラントの周囲組織に悪影響を
及ぼすことが原因である、と考えられています。
一方、歯周病の治療は容易ではなく(歯周病のページ参照)、
的確な治療をされずに放置されたまま、インプラントが行われることがあるようです。
それでもインプラント治療を行ってしばらくは、何の自覚症状もなく快適に噛むことが
出来ます。
ところが、長期的には問題が起こる場合が多いといわれています。
歯周病が重症になっても自覚症状に乏しいのと同様、インプラント周囲炎も
自覚症状が出たときには、大きな問題に発展している可能性があります。
インプラント周囲炎の治療は、歯周病の治療より更にやっかいです。
従って、歯周病の治療を的確に行えない歯科医師が、インプラント周囲炎に
対応するのは困難を極めるであろうことが、容易に想像できます。
|
 |
インプラント周囲炎を防ぐには
インプラント周囲炎を防ぐには、下記の項目について、実践することが重要です。
・ ご自身による、正しい方法で行う、時間をかけた歯磨き。
・ 専門家による定期的な徹底清掃。
・ 専門家によるかみ合わせの管理。
・ ナイトガードの装着
これらを行うのは面倒だ、という方にはインプラントは
お勧めできません。
|
 |
インプラント治療は、歯周病治療後に行うべき
先に述べたとおり、天然歯の歯周ポケット内細菌が、インプラントの周囲組織に
悪影響を及ぼします。
従って、インプラント治療を行う前に、歯周病の治療として
(1) 歯周初期治療(歯磨き指導と歯石取り)
(2) 歯周内科治療
(3) 歯周外科治療
を行うことにより、インプラントの治療成績も向上します。
(当院では少なくとも(1)は必須と考えます。)
|